2008.9.6 Harajuku 原宿

Camera: EOS 5D
Ernemann Anastigmat "ERNOSTAR" 1:2 f=10cm 151022
RIETZSCHEL PROLINEAR F:1.9 / 13.5cm 164290

渋谷から新宿まで散歩するといういつものコースです。日差しが強くてコントラストの強い条件ですが、これらの古いレンズは適度なコントラストで柔らかく写ります。


Ernemann Anastigmat "ERNOSTAR" 1:2 f=10cm 151022





F=2.0, Right:Pixel crop


F=2.0
これが本当に大正12年製造のレンズなのか疑いたくなるような、すばらしい解像度です。少しハレっぽいことを除けば、 光の滲みも収差も全く見えません。ツアイスがプラナーやビオターではなく、ゾナーを使った理由が分かるような気がします。ちなみに、エルノスターは105mm F1.8も持っていますが、レンズの明るさは同じです。F値は 1/(2sin U')であるわけですが、複雑なレンズのsin U'を得るためには有効径を測らねばなりません。一般のユーザーでそんなことをする人はいません。前玉を少し大きくすれば皆納得します。必要なことは、ただ小さなF値を刻印することです。

ここからは私の推測です。エルネマンのベルテレが1923年にエルノスターF2.0を開発し、エルマノックスに取り付けて売り出したところ、 ザロモンが新聞に写真をのせてくれたおかげで良く売れた。ところが、これを見た他社が急にまねして、F2.0やらF1.9のレンズを出すと発表した。 エルネマン社の営業部長はベルテレに対して、レンズの設計は変えなくてもよいので、ちょっとだけ前玉を大きくして、F1.8と刻印したいと言い出した。 ベルテレは悩んだ。そんな無茶なことはできない。そうだ、レンズ構成をちょっとだけ変えよう。残念ながら明るさは変わらないし、 ボケ味は少し悪くなるが、どうせこの先85年くらいたたないと気づく人はいないだろう。この戦略は見事に成功し、 F1.8と刻印されたレンズはますます良く売れたのだったとさ。


RIETZSCHEL PROLINEAR F:1.9 / 13.5cm 164290








F=1.9, Right:Pixel crop


F=1.9
Rietzschel Prolinear 1.9/135mmはErnostar付きのエルマノックスに対抗して、少し後に出たメントールレフレックスに取り付けられたレンズです。 御覧のように非常にソフトでして、とてもErnostarに対抗できるレンズには見えません。COX氏の本ではPORTRAIT AND SOFT FOCUS LENSESに分類されていますし、私も買った当初は失敗したかなぁと思いました。ところが、イメージサークルを調べてみると、 何とF1.9で5x7inchをカバーしていることが判明。急にこのレンズが良く見えてきたのです。

レイチェル社の中で行われた営業会議の様子を勝手に推測してみました。
営業部長: もうF4.5とかの暗いレンズは古臭い。5x7インチの大きなカメラも古臭い。F1.9のレンズを付けた小さいカメラを売りたい。
技術者: F1.9のレンズは5x7インチ用に開発したので、イメージサークルは大きいが、シャープネスが足りないので絞らないと使えません。
営業部長: よっしゃ分かった。わしにまかしとけ。だいたいこんな高いカメラは金持ちの老人しか買わん。 開放で皺の写らないレンズと言えば必ず売れる。それにお客さんは買うときはF値が0.1でも明るいレンズを欲しがるくせに、 写真を写すときにはぎゅっと絞るもんや。どうせ今から83年くらいは誰にも分からん。

残念ながらこのレンズは売れなかったようですが、83年経った今になって、ずいぶん楽しませてもらっているわけです。